長きに渡り楽しい結婚生活を送る人もいれば、数年で離婚してしまう人もいるし、途中から夫婦というものが形式的なものとなり、仕事の人間関係と同じような結婚生活をただ続けているだけの人もいる。
でも誰もがみな最初はこの作品にある「結婚の練習」のような何をするにも新鮮で、どんなささいな出来事も楽しく感じる時期があったはずだ。
しかし、その期間は長くは続かないことが大半だと思う。
これは時間の経過と共に、結婚生活の中で自分の考えを押し付けたり、相手に任せっぱなしになったりと、日常生活の出来事を二人で共有できなくなるからではないだろうか。
手探りながら二人で一緒に乗り越えようとしているからこそ、ほんのささいな出来事であってもその過程が楽しく感じられるのではないか。
その感覚をどれだけ続けられるかが「差」となっているのではないかと考える。
本作品の中の、周りが見たらバカップルと言われてしまう二人だけが楽しいほんのささいな出来事のあとの主人公の感情を引用する。
ここが頂点でもいいな、と思った。降りてきたように思った。
あとは登ることじゃなくて、まっすぐ進むことを考えればいい。僕と彼女を中心に置いた球体。その半径を拡げたり、狭めたりすればいい。半径を1メートルにするのもいいし、地球の半径まで延ばして考えるのもいい。固定したり、弾ませたり、薪をくべたり、色を塗り直したりして、ゆるやかに維持すればいい。カーテンを吊して、毛布を敷いて、僕らにつかめるものを増やそう。ときどき背伸びをして、なるべく遠くを見通したら、また足下みて。仲良く、礼儀正しく、世界中のカップルの手本になってもいい。
なぜか既婚男性の場合、結婚に対して否定的に語られることがほとんどだ。
それは日本人特有の照れ隠しがあるのでどこまで本心かわからないが、私は結婚前よりも結婚後の方がより楽しいと感じている。
それだけで自分は幸せなのだと感じた。
この主人公の感情に私は非常に共感する部分が多い。というか気づかないうちに夫婦二人ともこの感覚を最初から変わらず続けているような気がする。
とはいえ結婚当初と比べて全く変わっていないかというと違うと思うし、自己本位で中心が自分だけの半径を作ってしまうこともあるとこの本を読んで感じるところもあった。
日常のささやかな出来事の共有とその積み重ねが何よりも幸せだと言うことを感じる一冊だった。
ぜひ全ての夫婦に読んでほしい。